不器用な彼氏
雷が落ちて自家発電に切り替わったのかと思ったけれど、切り替わったときにつく青いランプはまだ付いていないようなので、どうやらそうではないらしい。

当社屋は、立地上、地域の災害の拠点として指定されていることから、施設全体に自家発電が標準装備されているので、こういった事態には、まず安心のはずだけど…。

『進藤さん、今一瞬、ここの照明消えましたよね?』

今度は、明確に名前を呼んで話しかけてみる…が、また無視される。名前を呼んで話しかけているにも関わらず返事がないのは初めてだったので、聞こえなかったのかもと思い、椅子を回転して進藤さんの方を向き直り、もう一度声をかけようとして、ハタと気が付く。

机に乗せた進藤さんの両手が小刻みに震えてる。いや、手だけじゃない身体全体が震えているようだった。

『進藤さん、もしかして…』

次の瞬間、外が眩しいくらいに光ったと思ったら即座に

"ドンッ!バリバリバリッ"

長く大きな雷鳴が空気を震え上がらせた。

『うわぁッ』『キャッ』

あまりの音の大きさに、思わず二人同時に叫んでしまう。
無論今回は二人だけではなく、フロアにいた数名の社員達が各々に声を上げたのは、誰もが不可抗力だったろうと思う。

驚いたのは、雷鳴の大きさだけでない。それと同時に、執務内のありとあらゆる照明がダウンしてしまっていた。窓から見えていた、周りの家屋も真っ暗なところをみると、どうやらこの辺り一帯、停電しているようだった。
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