不器用な彼氏
先程の眼鏡男子に『お姉さんこそこんな時間に、迷子ですか?』と聞かれ、うまい返答も出来ず笑って誤魔化すと、後ろにいた短髪で長身の男の子が独り言のように

『コンビニでもあれば…』

と、口にする。
それを聞いて、ハタと思い出した。

午前中、伊豆方面に向かうために、ここを車で通った時、この海岸沿いの道路の先に、コンビニがあったような気がする。

確かにコンビニがあれば、そこの従業員に聞くなり、地図などで調べることも可能だろうと思い至る。
そのことを伝えると、3人共に顔を見合わせて、ホッとしたのか、嬉々とした表情をした。

『申し訳ないのですが、そこまで案内していただけませんか?』
『え?』
『俺達、車で来てるので、コンビニまで案内してくれれば、後は、お姉さんの泊まってる旅館まで送りますよ?』
『…でも…』

どうしよう?コンビニまでとはいえ、さすがに見知らぬ男性3人と車に乗るのは、抵抗がある。
この青年たちが嘘を付いているようには見えないし、自惚れも良いところかもしれないけれど…。

思わず、躊躇していると、目の前では3人揃って、本当に困ったように『お願いします』と頭を下げられる。

う、う~ん…コンビニまでは、確か大した距離ではなかったはずだし…

『…じゃ、そこまでなら…』

そういうと、即座にお礼を言われると同時に、先程の短髪君が『車、こっちですから…』と、私の右肩に手を添えた。

< 214 / 266 >

この作品をシェア

pagetop