不器用な彼氏
一周を終え、スタートした小さな祠のある場所まで戻ると、改めて二人並んで、巨大な大木を見上げてみる。
やはり、その圧倒的な存在感は、圧巻の一言で、この前にいるだけで、何か清々しい気持ちになり、心が洗われるような、不思議なパワーを感じずにはいられない。
『なあ』
隣に立つ海成が、おもむろに、聞いてくる。
『何?』
『たしか、この一周で、一年寿命が延びるんだったな』
『うん、そうみたいだよ』
『…そうか』
御神木の小さな祠の前で、海成が静かに独り言のようにつぶやく。
『じゃあ…また一年、お前と一緒にいる時間が増えたってことだな…』
私しか知らない優しい声音で、天から降ってくるように聞こえてくるその一言に、また胸が熱くなり、どうしようなく泣きたくなる。
その言葉が、どんな意味を持っているかなんて、きっと考えもしないのだろう。
不器用なくせに、この上なく優しい人。
繋がれている手を、ギュッと握りしめて、溢れそうになるものが零れないように、天を仰ぐ。
永い時を経て生い茂る、いくつもの葉の隙間から、眩しい程の木漏れ日。
隣にいる、“不器用な彼氏”と、共に歩く未来に想いを馳せた…。
Fin
やはり、その圧倒的な存在感は、圧巻の一言で、この前にいるだけで、何か清々しい気持ちになり、心が洗われるような、不思議なパワーを感じずにはいられない。
『なあ』
隣に立つ海成が、おもむろに、聞いてくる。
『何?』
『たしか、この一周で、一年寿命が延びるんだったな』
『うん、そうみたいだよ』
『…そうか』
御神木の小さな祠の前で、海成が静かに独り言のようにつぶやく。
『じゃあ…また一年、お前と一緒にいる時間が増えたってことだな…』
私しか知らない優しい声音で、天から降ってくるように聞こえてくるその一言に、また胸が熱くなり、どうしようなく泣きたくなる。
その言葉が、どんな意味を持っているかなんて、きっと考えもしないのだろう。
不器用なくせに、この上なく優しい人。
繋がれている手を、ギュッと握りしめて、溢れそうになるものが零れないように、天を仰ぐ。
永い時を経て生い茂る、いくつもの葉の隙間から、眩しい程の木漏れ日。
隣にいる、“不器用な彼氏”と、共に歩く未来に想いを馳せた…。
Fin