不器用な彼氏
第1話 進藤海成という男


『横浜西支店から来ました、櫻木菜緒です。恐れ多くもTMにチャレンジすることになりました。一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします』

5月半ば。
数週間に及ぶスパルタ研修を終え、新しい職場“横浜南支店”に初出社。

配属された営業部の執務室は、老朽化の進む3階建てのビルの2階部分にあり、フロアは、東側に位置するお客様入り口玄関から、西側に長く伸びて全体的に薄暗く、昭和初期の雰囲気がそこかしこに漂っている。

その中央あたりで、最初の全体挨拶を済ませてから、所属の係長と連れ立って、入り口近くのTM担当エリアで、意気揚々と挨拶するも、若干すべり気味で失笑が漏れた。
確かに、誰もが嫌がるTMに志願するなど、変人と思われても仕方ないのかもしれない。
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