不器用な彼氏

『…進藤さんは緊張…しないんですか？』

完全に進藤さんのペースに流されかけている自分を、必死に取り戻す為に、逆質問。

『私と…一緒にいて…そのドキドキとか…』

いい歳して、我ながら気恥ずかしい質問をしたと、言った瞬間後悔したが、その答えは

『しねぇな』

と、即座にバッサリ。そんなハッキリと…。
そりゃ良い意味で、気を許してくれているってことかもしれないけれど、やっぱり少しはドキドキしてほしい。

『…そうですか…』

“シュン”として、ビールを一口。

『バカ、真に受けんな』
『え？』
『してるに決まってんだろう』

今度は進藤さんが視線をそらし、照れ隠しなのか、ビールをあおって、

『お前ほどじゃないけどな』

と付け加える。

オタクじゃないからよくわからないけれど、これって“萌え”ってことなのかも。職場では見られないツンデレな進藤さん。知るたびに、どんどん惹かれていく。

こんな風に、私の前で、素のままを見せてくれてるなんて、思ってもみなかった。
もっともっと、いろんな進藤さんを知りたくなる欲求。

それと同じように、私のことも知ってほしい。だから…