不器用な彼氏
第5話 バレンタイン・キス
年が明け、職場は壊れかけていた旧社屋から、無事、新社屋に移転。新しい自社ビルは5階建ての低層ビル。
1~2階は半分吹き抜けのような造りになっていて、近くにある展示場と連携して、ちょっとしたショールームにもなっている。
内装は、全体的に無機質になりがちな都会のビルのイメージを払拭するべく、自然をアピールするためか、ふんだんに木材が使用されていて、木の香り漂う落ち着いた空間が広がっていた。
2階部分までは、主に営業課が占拠しているけれど、関連の深いTM課も2階フロアの一角を占めていて、お客様や関連業者の方がスムーズに来られるように、1階吹き抜けの右側にある階段を上った先、ガラスの自動扉を抜けると、旧社屋同様、TMのメンバーが、ローカウンターの前に、同じように並んでいる。
外からの採光も充分自然に入り、あのどんよりとした以前の雰囲気はなく、執務室内は真っ白で明るく快適な空間が広がっていた。
『進藤さん、いらっしゃいますか?』
その声に顔をあげると、目の前に、進藤さんの受け持つ現場の業者が立っていた。すぐに後ろにいる彼に声をかける。
『進藤さん、お客様です』
『ああ』
いつも通りそっけない返事をされ、机から椅子に座ったまま、カウンターの方に向き直り、無言で業者から出された書類を受け取る。業者さんとはいえ、一応お客様なのだから、もう少し愛想よく対応したらいいのに…と、余計なことながら思ってしまう。
私も、約束しているお客様との打ち合わせの書類を整理するために、手元の机より広いカウンターの方に、身体の向きを変えた。
こうするとカウンターとカウンターの間に50㎝ほどの通路が空いているものの、すぐ隣に彼がいることになる。
1~2階は半分吹き抜けのような造りになっていて、近くにある展示場と連携して、ちょっとしたショールームにもなっている。
内装は、全体的に無機質になりがちな都会のビルのイメージを払拭するべく、自然をアピールするためか、ふんだんに木材が使用されていて、木の香り漂う落ち着いた空間が広がっていた。
2階部分までは、主に営業課が占拠しているけれど、関連の深いTM課も2階フロアの一角を占めていて、お客様や関連業者の方がスムーズに来られるように、1階吹き抜けの右側にある階段を上った先、ガラスの自動扉を抜けると、旧社屋同様、TMのメンバーが、ローカウンターの前に、同じように並んでいる。
外からの採光も充分自然に入り、あのどんよりとした以前の雰囲気はなく、執務室内は真っ白で明るく快適な空間が広がっていた。
『進藤さん、いらっしゃいますか?』
その声に顔をあげると、目の前に、進藤さんの受け持つ現場の業者が立っていた。すぐに後ろにいる彼に声をかける。
『進藤さん、お客様です』
『ああ』
いつも通りそっけない返事をされ、机から椅子に座ったまま、カウンターの方に向き直り、無言で業者から出された書類を受け取る。業者さんとはいえ、一応お客様なのだから、もう少し愛想よく対応したらいいのに…と、余計なことながら思ってしまう。
私も、約束しているお客様との打ち合わせの書類を整理するために、手元の机より広いカウンターの方に、身体の向きを変えた。
こうするとカウンターとカウンターの間に50㎝ほどの通路が空いているものの、すぐ隣に彼がいることになる。