不器用な彼氏

『ま、そういうわけで、我が社待望の女性2人目…え?初?へぇ~初なの?ハイ女性初のTMということですので、是非とも大事に育ててあげてください』

後に、私にとって,入社史上最低上司として苦しめられることになる直属の上司、江守係長のいい加減な紹介が終わると、一緒に働くことになるTMメンバーが紹介される。

横浜の南部エリアを担当とするTMは、私を入れて8名とのこと。なり手がいない仕事なだけに、ここのTMもベテランぞろいだけれど、その中で一人、異動前の職場で一緒に働いたことのある東(あずま)君がいた。

私より2つ程年下だけど、TM経験は長く、西支店の時から換算すると5~6年になるだろうか?今回、私がTMを受けるにあたり、前からの知り合いということもあるのか、トレーナー(教育係)を引き受けて下さったとのこと。知らない人の多い職場だったので、これはありがたい。

『東君、久しぶり。いろいろ、ご指導お願いします』
『やだなぁ櫻木さん、改まらないで下さいよ。こちらこそ、よろしくです』

席はお客様用の入り口に一番近いローカウンターの内側にあり、各自、営業担当から受け持ったお客様や、関係業者の方とそのまま対応できるように、カウンター沿いに、垂直方向に机が2つずつ向かい合わせになって、計4か所、全部で8つの席が並んでいた。

ひとしきりその場にいたTM全員の自己紹介が済み、“ではこれで…”となった時、ふとまだ紹介されていない人が、もう一人いることに気がつく。


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