不器用な彼氏

『あの、確かTMさんってもう一人いらっしゃいますよね…?』

江守係長に問いかけてみる。

『あぁ進藤君ね。東君、進藤は?』
『昨日徹夜だったみたいで、朝から帰りましたね』
『あ、そう。えっとね、もう一人進藤っていう…まぁ会えばわかるんだけど、ちょっとガタイの大きいのがいてね。一見怖そうに見えて、マジで怖いから…ってオイオイ誰か否定しろよ~』

江守係長の問いかけに、なぜか皆、苦笑いしている。

『…怖い?』
『いやいや、係長、奴は怖いんじゃないの!顔がちょっと怖いだけで、根は優しいんだって!』

主任の古賀さんがフォロー(?)するも誰もその意見に対して、肯定しない。

『ま、取って食いやしないだろうから安心して。東君、進藤君来たら紹介してやって』

中途半端な情報で終わってしまい、逆に気になったが、執務時間も過ぎていたのでそれ以上は続かず、場は解散となった。

TM担当のもう一人“進藤さん”…とは、一体どんな方なのだろう?

謎を残したまま、案内された新しい自分の席で、旧職場から持ってきたダンボールの封を解き、机の整理を始める。

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