不器用な彼氏
耳元でする彼の低い声が、私の理性を麻痺させてしまう。
ゆっくり近づく気配に、彼のシャツを握りしめながら羞恥に耐え、ゆっくりと瞳を閉じ…
“ガラッ!”
次の瞬間、執務室の扉が乱暴に開かれ、私たちは、はじかれるように自分たちのカウンターに向き直る。
『あれ?二人ともまだ残ってたの?ダメだよ、引っ越しの準備はもっと早めにしておかないと~。進藤君、これ業務外だし残業つけられないぞ。櫻木さんも進藤君と二人きりなんて怖いよね~。何かあったら大変だ!って、冗談はさておき、ホントもう帰りなさいよ?ね?それじゃ私は、先に上がるからね。じゃお先~』
『…チッ(怒)!!』
『…お疲れ様です…』
一方的にまくしてた江守係長の去った執務室には、しばし何ともいえない沈黙が流れる。
その時、私たちの心の中は、間違いなく同じ感情に支配されていた。
“江守、あいつぶっ殺す!”
時刻はまもなく午後7時45分になろうとしている。
折しもAS専用電話からの軽快な呼び出し音が鳴り、夜間対策室からAS担当社員があわてて飛び出してくる。
どうやら、夜間しか作業のできない現場で、トラブルが発生したらしい。にわかに周りがあわただしくなる。彼は、急に仕事モード全開になり、
『俺、ちょっと手伝ってくる…送ってやれねぇけど、お前もう帰れ』
『あ、うん…そうだね。そうする…』
残っていた業務も明日に回すことにし、帰り支度を始める。彼も急いで身支度すると、対応の為、AS課に向かう。ふと、彼がすれ違いざま『あ、そうだ』と振り返り、私の耳元で爆弾発言をして立ち去る。
“続きは、また今度な”
私は、その場でしばし立ちすくし、熱くなった頬を抑えると
『ばか!』
彼の専売特許である独り言をつぶやいた。
ゆっくり近づく気配に、彼のシャツを握りしめながら羞恥に耐え、ゆっくりと瞳を閉じ…
“ガラッ!”
次の瞬間、執務室の扉が乱暴に開かれ、私たちは、はじかれるように自分たちのカウンターに向き直る。
『あれ?二人ともまだ残ってたの?ダメだよ、引っ越しの準備はもっと早めにしておかないと~。進藤君、これ業務外だし残業つけられないぞ。櫻木さんも進藤君と二人きりなんて怖いよね~。何かあったら大変だ!って、冗談はさておき、ホントもう帰りなさいよ?ね?それじゃ私は、先に上がるからね。じゃお先~』
『…チッ(怒)!!』
『…お疲れ様です…』
一方的にまくしてた江守係長の去った執務室には、しばし何ともいえない沈黙が流れる。
その時、私たちの心の中は、間違いなく同じ感情に支配されていた。
“江守、あいつぶっ殺す!”
時刻はまもなく午後7時45分になろうとしている。
折しもAS専用電話からの軽快な呼び出し音が鳴り、夜間対策室からAS担当社員があわてて飛び出してくる。
どうやら、夜間しか作業のできない現場で、トラブルが発生したらしい。にわかに周りがあわただしくなる。彼は、急に仕事モード全開になり、
『俺、ちょっと手伝ってくる…送ってやれねぇけど、お前もう帰れ』
『あ、うん…そうだね。そうする…』
残っていた業務も明日に回すことにし、帰り支度を始める。彼も急いで身支度すると、対応の為、AS課に向かう。ふと、彼がすれ違いざま『あ、そうだ』と振り返り、私の耳元で爆弾発言をして立ち去る。
“続きは、また今度な”
私は、その場でしばし立ちすくし、熱くなった頬を抑えると
『ばか!』
彼の専売特許である独り言をつぶやいた。