不器用な彼氏
『進藤さんって面白いですねぇ』
お昼に更衣室に入るなり、そう話しかけてきたのは、後輩の通称『あゆゆ』と呼ばれている3階のデザイン担当の一人。
まだ、20代半ばというのに、妙に落ち着いているのは、入社してすぐに出会った彼と、既に今秋に、結婚が決まっているからだろうか。
『どうしたの?あゆゆ?』
『進藤さんって、TMから“広域”に行った、進藤さん?』
普段、可愛い顔に似合わないほどのポーカーフェイスのあゆゆが、笑いをこらえながら話す様がよほど珍しかったのか、同僚の翔子さんも諏訪ちゃんも、興味津々で彼女の話を聞き出した。
『“怖い”の間違いじゃなくて?』
私も若干驚きながら、レンジで温めたパスタを持って、あゆゆの右側の席に座る。
『私も、最初は怖い人だと思ってたんですよぉ。実際、前に仕事で相談に行った時、すごく怖かったし』
女性の扱いに慣れていない彼の事だ。ましてや若いあゆゆに対して、どう接していいか分からず、つっけんどんな態度をとったであろう姿は、容易に想像できた。
『でも、結構おちゃめなとこあるみたいで、今日もコピー機の前で、コピー機相手に喋ってて』
『あ~出た!進藤さんの独り言!』
と諏訪ちゃん。
『そうなんですよ。それも結構大きな声で、誰かと話してるのかなぁと思ったら、一人で怒って一人で納得してて…』
“その姿がおかしくて…”と、あゆゆは、その様子を思いだしたように、また笑う。
どうやら、今まで使っていた2階のコピー機と3階のコピー機のメーカーが違うために、使い勝手が違い、戸惑っていたらしい。
『櫻木さんは、TMで一緒だったんですよね?』
『…うん。まぁね…口は悪いけど、根は悪い人じゃない…みたいよ?』
差し障りのない程度にフォロー。
すかさず諏訪ちゃんに『櫻木さんには、いつも冷たかったですけどね~』と言われ、苦笑い。
まさか、その私達が恋仲になっているとは、誰も想像もつかないのだろう。
でも、良かった。それでなくとも、あの体格と強面の顔、独り言での暴言の数々で、理解しがたいイメージの彼。こんな風に、気が付いてくれる人もいるのだと思うと、なんだか、少しホッとした。
お昼に更衣室に入るなり、そう話しかけてきたのは、後輩の通称『あゆゆ』と呼ばれている3階のデザイン担当の一人。
まだ、20代半ばというのに、妙に落ち着いているのは、入社してすぐに出会った彼と、既に今秋に、結婚が決まっているからだろうか。
『どうしたの?あゆゆ?』
『進藤さんって、TMから“広域”に行った、進藤さん?』
普段、可愛い顔に似合わないほどのポーカーフェイスのあゆゆが、笑いをこらえながら話す様がよほど珍しかったのか、同僚の翔子さんも諏訪ちゃんも、興味津々で彼女の話を聞き出した。
『“怖い”の間違いじゃなくて?』
私も若干驚きながら、レンジで温めたパスタを持って、あゆゆの右側の席に座る。
『私も、最初は怖い人だと思ってたんですよぉ。実際、前に仕事で相談に行った時、すごく怖かったし』
女性の扱いに慣れていない彼の事だ。ましてや若いあゆゆに対して、どう接していいか分からず、つっけんどんな態度をとったであろう姿は、容易に想像できた。
『でも、結構おちゃめなとこあるみたいで、今日もコピー機の前で、コピー機相手に喋ってて』
『あ~出た!進藤さんの独り言!』
と諏訪ちゃん。
『そうなんですよ。それも結構大きな声で、誰かと話してるのかなぁと思ったら、一人で怒って一人で納得してて…』
“その姿がおかしくて…”と、あゆゆは、その様子を思いだしたように、また笑う。
どうやら、今まで使っていた2階のコピー機と3階のコピー機のメーカーが違うために、使い勝手が違い、戸惑っていたらしい。
『櫻木さんは、TMで一緒だったんですよね?』
『…うん。まぁね…口は悪いけど、根は悪い人じゃない…みたいよ?』
差し障りのない程度にフォロー。
すかさず諏訪ちゃんに『櫻木さんには、いつも冷たかったですけどね~』と言われ、苦笑い。
まさか、その私達が恋仲になっているとは、誰も想像もつかないのだろう。
でも、良かった。それでなくとも、あの体格と強面の顔、独り言での暴言の数々で、理解しがたいイメージの彼。こんな風に、気が付いてくれる人もいるのだと思うと、なんだか、少しホッとした。