不器用な彼氏
第一印象は、とにかく“デカッ”という一言に尽きる。
翌朝、自分の席に向かうと、真後ろの席に、大きなガタイの男性が座っていた。軽く180センチは越えているのだろう。156センチの私からしたら、横に並ぶと見上げる程の高さになる。
第一声、恐る恐る
『し、進藤さん?おはようございます、櫻木です。今日から、よろしくお願いします』
声をかけると、ほんの一瞬ジロリと一瞥して『あぁ』とニコリともせず一言。
すぐ反対向きの机に向かってしまったので、ゆっくりと顔すら見せては、くれなかった。大きな広い背中からは“話しかけるなオーラ”が漂っている。
仕方なく自分の机に向き直ると、向かいの席で東君が、ニヤニヤしながら、“ほらね”という顔をしている。
私は小さく肩をすぼめて、苦笑いするしかない。確かに、コミニュケーションを取ることが、かなり難しい人のようだ。
そして、しばらくすると、東君が言っていたことは、あながち大げさではなかったことを知る。
ありとあらゆる動作が規格はずれで、冊子の置き方やドアの開け閉め、椅子に座る動作一つも、力加減というものが、わからないようだった。