不器用な彼氏
午後三時…ひとしきり実践も経験し、彼女も自分の業務に戻る時間が近づくと、私の代わりに座っていた席を立ち、おもむろにTMの面々に向かって深々と頭を下げ

『とても勉強になりました。ありがとうございました』

と、モナリザ級の微笑みを振りまく。

同じ女性でもこうも違うものか?と思うほど、目じりが下がりまくったメンツを後に、『じゃ行こっか?』と、彼女を2階フロアのお客様入口まで誘導する。

途中、吸い寄せられるように付いてくる古賀主任を追い払い、ガラスの自動ドアを抜け、2階の小ホールへと抜ける。

吹き抜けの1階から上がってきた階段の上り口に広がるそのスペースには、ちょっとしたピロティ―なっていて、小さなテーブルと椅子が何脚かあり、その脇には、いくつかの観葉植物。

1~2階分、木枠に嵌められたガラス窓から、梅雨前のそのやわらかな日差しが降り注ぐこのスペースまで来ると、“最終日だから”と事前に買っておいた“ピーチローズティー”を『一週間お疲れ様』と、彼女に手渡す。

満面の笑みでお礼を口にすると『これ美味しいですよね♪』と、またにっこりと微笑まれる。

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