不器用な彼氏
『進藤さん!どうしたんですか?』

私の目をじっと見ていたはずの大きな瞳は、瞬時に背後の人物へとそそがれ、嬉々とした声を発すると、同時に小走りでそちらへ向かう。

若干、ホッとして振り返ると、ちょうど3階からの下り階段を降り、この小ホールへ入ったあたりで、彼が彼女と向き合うように立っていた。

こんなに至近距離に彼がいるのは、一週間ぶり。もちろん、困っている私を助けてくれたわけではなく、用事があったのは彼女の方で、こちらへは視線一つよこさない。

『昼に広域に来た時、コレ忘れただろ?』

彼の無骨な手のひらには、薄いピンク色のふわふわしたハンドタオルらしきものがあった。
確かに、どう考えても100%彼のものではなさそうだ。

『あ、それ私のです。よかったぁ~どこに忘れたんだろうって、探してたんですよぉ。ありがとうございます』

手のひらからハンドタオルを受け取ると、やっぱり満面の笑みで応える。

『じゃ渡したからな』

“用事は済んだ”とばかりに、彼はすぐ背を向けて階段を上ろうとする。

『あ!進藤さん、ちょっと待ってください』

突然、彼の制服の裾をひっぱる。
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