不器用な彼氏
驚きのあまり、いつも以上に声がでかくなり、半分以上が他課が入っている、3階フロアに大きく響いてしまい、周りの数名が、何事かとこちらを見る。

『オイオイ、驚きすぎだろ』

と慌てる本庄さん。

『あれ?その反応じゃ、進藤さんも知らなかったんすか?』

とマツ。

海成は、至って平常心を繕いつつも、『まさか…ありえねぇ…』とつぶやく。そりゃそうだ。あいつと付き合ってるのは、紛れもない自分なのだから、ありえるわけがない。

『いや、正確に言うと、つきあっているかどうかは、わからないんですけどね…』

マツが更に小声になり

『東さんが、櫻木さんを狙ってるっていうのは、本当らしいっすよ』

ホッとしたのもつかの間、マツの口から聞き捨てならない言葉が飛び出し、出来る限り冷静さを保ち、

『…なんでわかる?』

と、聞いてみる。

マツは、なぜかその質問には直接答えず、

『ところで進藤さん、東さんの机の上にスタンド鏡があるの知ってます?』
『鏡?知らねぇな?』
『やっぱり!進藤さんがこっち(広域)来てからなんだ!』

一人、“合点がいった”と、納得したようにうなずくマツに、少し苛立ち

『その鏡が何なんだよ?』

煽るように先を促すと、マツの代わりに本庄さんが答える。

『東がその鏡で、仕事中、後ろに座っている彼女を盗み見てるって言うんだよ、な?マツ』
『は?』
『そうなんすよ!ほら、去年まで二人は向かい合わせだったけど、今年進藤さんが異動してから、TMって席替えしたじゃないですか?それで、直接正面で見れない背中合わせになっちゃったから、じゃないですかねぇ~』
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