不器用な彼氏
『そのうち、どっか旅行でも行くか…?』
『え?』
唐突に問われた質問に驚いて、彼の腕の中で、一瞬固まる。
『何だ、嫌か?』
『ううん、嫌じゃないけど…いいの?外で会うなんて、誰かに見られたら…』
『別に、見られたら見られたでいいだろう、今更、隠す必要もない』
彼の胸に触れている手のひらから、先程から流れる乱れのない鼓動を感じ、彼の気持ちがダイレクトに伝わってきて、温かい気持ちになる。
もう、不安などない。
『うん、行く。行きたい』
『それより、お前こそ、いいのかよ?』
次に頭上から降ってきた質問の意図がわからず、“何が?”とみつめると、彼は目線を外して、心なしか耳を赤らめる。
『…言っておくが、旅行って日帰りじゃねぇからな』
と、なぜか怒ったように言い放つ。
私は思わず吹き出して『わかってるよ』と答えると、『何がおかしい?』と叱られる。
彼の胸にあった両方の手のひらに少し力を込めて、彼の腕の中からやんわり逃げ出すと、今度は出来るだけ大人の顔をして彼を見上げて、
『バカね。私をいくつだと思ってるの?子供じゃないのよ』
と、カッコつけてみせる。彼は、フッと笑い
『確かに、違いねぇな』
思えば、この年になってお付き合いをしていて、半年以上そういった関係にならない方が、不思議な気もしていた。
ただ、彼とは急ぐ必要もなかったし、そんなつながりがなくても、充分満たされていた気がする。だから、あえて深く考えなかったのかもしれない。
後になって、このことを彼に聞いたら、彼も同じようなことを言っていて、なんだかホッとした。
その時、少し心配になり、冗談めかして『まさか私にそういった魅力がなかったとか?』と聞いたら『なわけねぇだろ?アホかッ』と、またあきれられた。
『え?』
唐突に問われた質問に驚いて、彼の腕の中で、一瞬固まる。
『何だ、嫌か?』
『ううん、嫌じゃないけど…いいの?外で会うなんて、誰かに見られたら…』
『別に、見られたら見られたでいいだろう、今更、隠す必要もない』
彼の胸に触れている手のひらから、先程から流れる乱れのない鼓動を感じ、彼の気持ちがダイレクトに伝わってきて、温かい気持ちになる。
もう、不安などない。
『うん、行く。行きたい』
『それより、お前こそ、いいのかよ?』
次に頭上から降ってきた質問の意図がわからず、“何が?”とみつめると、彼は目線を外して、心なしか耳を赤らめる。
『…言っておくが、旅行って日帰りじゃねぇからな』
と、なぜか怒ったように言い放つ。
私は思わず吹き出して『わかってるよ』と答えると、『何がおかしい?』と叱られる。
彼の胸にあった両方の手のひらに少し力を込めて、彼の腕の中からやんわり逃げ出すと、今度は出来るだけ大人の顔をして彼を見上げて、
『バカね。私をいくつだと思ってるの?子供じゃないのよ』
と、カッコつけてみせる。彼は、フッと笑い
『確かに、違いねぇな』
思えば、この年になってお付き合いをしていて、半年以上そういった関係にならない方が、不思議な気もしていた。
ただ、彼とは急ぐ必要もなかったし、そんなつながりがなくても、充分満たされていた気がする。だから、あえて深く考えなかったのかもしれない。
後になって、このことを彼に聞いたら、彼も同じようなことを言っていて、なんだかホッとした。
その時、少し心配になり、冗談めかして『まさか私にそういった魅力がなかったとか?』と聞いたら『なわけねぇだろ?アホかッ』と、またあきれられた。