不器用な彼氏
『だってこんなところで、緊張するよ、カイ君っ』
『あっ、それ』
『?』
『その呼び方、やめろ。もう子供じゃねぇんだから』
『じゃあ、なんて?』
『呼び捨てでいい』
『呼び捨て…って、進藤?』
『こら、ふざけんな』
『…ごめん』
照れ隠しで、誤魔化して笑う。うそ…本当は夢の中で何度も言ってみたことがある呼び名。
『本当に呼んでいいの?』
『何度も言わすな…お前だけだ』
そんなこと言われたら、また胸がいっぱいになっちゃうよ。
業務終了時間が近づき、扉の外では何やら人が行きかう音が、かすかに聞こえる。でも、もうそんなことは気にならないほど、彼しか見えなくなる。
もう一度、彼の腕が扉に押し付けられ、ゆっくり近づいてくるのを感じる。思わず緊張のあまり下を向く私のあごに、彼の大きな右手が添えられ、今度は否応なしに上を向かされてしまう。
背の高い彼は少し前かがみになり、私は逆に彼に近づくため、少し背伸びをする。
『呼べよ』
低い声が耳元で聞こえる。
『……ィ?』
『聞こえねぇ』
彼の体温をすぐ間近に感じて、ゆっくり目を閉じながら、彼の名を呼ぶ。
『…海成…』
フッと笑う気配がして
『上出来だ…』
最後の言葉と同時に、優しく触れた暖かなぬくもりに、もう何も考えられなくなる…。
『あっ、それ』
『?』
『その呼び方、やめろ。もう子供じゃねぇんだから』
『じゃあ、なんて?』
『呼び捨てでいい』
『呼び捨て…って、進藤?』
『こら、ふざけんな』
『…ごめん』
照れ隠しで、誤魔化して笑う。うそ…本当は夢の中で何度も言ってみたことがある呼び名。
『本当に呼んでいいの?』
『何度も言わすな…お前だけだ』
そんなこと言われたら、また胸がいっぱいになっちゃうよ。
業務終了時間が近づき、扉の外では何やら人が行きかう音が、かすかに聞こえる。でも、もうそんなことは気にならないほど、彼しか見えなくなる。
もう一度、彼の腕が扉に押し付けられ、ゆっくり近づいてくるのを感じる。思わず緊張のあまり下を向く私のあごに、彼の大きな右手が添えられ、今度は否応なしに上を向かされてしまう。
背の高い彼は少し前かがみになり、私は逆に彼に近づくため、少し背伸びをする。
『呼べよ』
低い声が耳元で聞こえる。
『……ィ?』
『聞こえねぇ』
彼の体温をすぐ間近に感じて、ゆっくり目を閉じながら、彼の名を呼ぶ。
『…海成…』
フッと笑う気配がして
『上出来だ…』
最後の言葉と同時に、優しく触れた暖かなぬくもりに、もう何も考えられなくなる…。