プレミアムステイは寝不足がベスト

「想像してることが顔に出てるぞー」

彼女に指摘されて我に返った。

「えっ、うそ!」

慌てて妄想を強制終了するが、顔がみるみる熱くなる。

そんな私を見て、彼女はますます楽しそうに笑った。

私はよく考えていることが顔に出ると言われる。

喜怒哀楽はもちろん、恋愛感情もだだ漏れなんだそうで、私が彼を好きになったのを周囲が察して、みなさんのありがたいご協力のもと、お付き合いすることになった。

もういい大人なのに感情を隠せないのは短所だと思うのだが、そんな私を彼女は「うらやましい」と言ってくれる。

彼女はいつも笑顔で、はつらつとしている。

苦しいときも悲しいときも、それを表に出さない強さがある。

私はそんな彼女をいつもカッコいいと思っているし、私こそ、その強さをうらやましいと思っている。

「相手が独り暮らしだと、お泊まりは専ら彼の部屋になるんだろうけど、たまにはこういうのも必要だよね」

彼女はそう言ってふわふわの部屋着に身を包んだ両手足を大胆に広げ、自分のベッドへ寝転がる。

めくれ上がったトップスの裾からお腹が少し見えている。

ついさっきまで、頭のてっぺんから爪先まで少しの隙もないほどに着飾っていた彼女からは考えられない姿だ。

「うん。今度誘ってみようかな」

私がそう言うと、彼女はふと微笑んだ。

そしてそのあとすぐ、寝転んだまま部屋着の袖に包まれた腕を目もとにのせた。

ヒールの靴やお気に入りのワンピースを脱ぎ、メイクを落として髪のセットを崩した彼女は、いつもより少し弱い。

隣のベッドから聞こえた鼻をすする音が、ぬくもりのある部屋に吸収された。

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