今度は逆に、俺から行くから。
考えていたら、楓はもう立ち上がって帰り支度をしている。スマホを取り出しながら男達と話してる姿に焦って、手にしていた携帯で送る。
【この後、空いてる?】
近づいてきて「約束があるの」とすげなく振られたが、とりあえず着信拒否されてはいないことがわかってホッとする。
困ったような顔をしているけれど、不快感はないらしいし。上出来だ。
来週は空けといて、と一方的に言ってその場を後にした。一度に長々とアピールするのは逆効果だ。
でもその日のうちにまた送信。宿題の相談開始だ。
【俺の逆ってなんだと思う?】
【仕事はズボラに、プライベートはマメに】
迷うことなくサクッと返事してくるな。いい反応だが、内容に耳が痛い。
マメじゃなかったよな、確かに。甘えてたよ。
それから一週間。仕事で研修ネタ使ってみてすべったとか、どうでもいいような話をちょこちょこマメに送った。
やりすぎてうざがられるかと気にはなる。でもこれはプライベートで、マメにするのは楓公認の宿題だ。迷うことはないはずだ。
ここは、営業原則2.商品価値を信じる、だよな。
浮気して振られた上、2年も経って今更やり直したいとか、もともと無理ゲーだ。
それでも、俺は、俺を信じる。
……これは甥っ子が見てた仮面ライダーのセリフ。ヒーローになりきらなきゃやってらんないだろ。