今度は逆に、俺から行くから。

「私が喜ぶデートってどういうの?」

強気な口調のまま、楓の態度が緩んだ。

「……夜景が見える部屋、取ってある」

ドン引きされる恐れがあるのは分かってる。でも、失うものはないからな、俺には。



「好きな感じの夜景かどうか、見てみないとわかんないな」

「じゃあ見に行こうか」

浮かれた気持ちを必死で抑えて、さっと立ち上がった。

でも、これでうまく行くとは決まってない。

『好きだ、つきあってくれ』

たぶん楓の心を動かすのはそういう直球。部屋まで連れて行って、ちゃんと言おう。

営業原則3.最後まで気を抜かない、だよ。




「行動に出るって決めたんだ。楓の気持ちは尊重しない」

気持ちが焦って出てきた言葉は、ちょっと間違えた。尊重しないんじゃない、流されないってことなんだ。

「威張って言うこと?」

呆れたように見上げられるけど、怒ってないな。

エレベータで二人きりになった瞬間、そのまま壁に追いつめて宣言する。

「逆で行くから。今度は俺が落とす、絶対」

楓は何も言わない。 ゆっくり押し戻されてダメかと思ったら、ぎこちなく指を絡めてくる。

かわいい。このまま襲いたくなるけど、そうじゃない。落ち着け、俺。

つながった熱い指に力をこめつつ、部屋までじっと我慢した。
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