雪の華
咲雪
時間は色々と解決してくれる。

気持ちも少しずつ落ち着いてきた…

だけどやっぱり…寂しい。

前ほどではなくなった頃…茉叶の一言に私は固まる。


「そう言えば…咲雪、立ち直ったみたいだから言うね…」


「何を?」


「皇雅くんの事…」


「何…?」


「みさき…って知ってる?」


「まぁ…元カノさんでしょ?」


「知ってたんだ?」


「まぁ…」


「咲雪を守るために…別れたんだよ?」


「どういう事?」


「咲雪は知らないかもしれないけど…咲雪の家にイタズラ電話とか、咲雪の家に行って…お母さん色々言われたはず…本当に知らない?」


嘘だ…知らないよ…何も聞いてない…


「咲雪のお母さんには皇雅くんの子供妊娠したから、別れるように説得してとか言いに言ってたみたい…」


だから…何も聞いてこなかったんだ…


「咲雪のお母さんも我慢していたみたいだけど…疲れちゃったみたいで…皇雅くんに相談したみたい…」


「私のお母さん…皇雅の連絡先しらないけど…」


「咲雪のケータイから…連絡したハズ…」


えっ………


今、思い返せばあったかも…心当たり。


私はケータイの置く場所を決めている。


ケータイホルダーに必ず置く。

だけど…お風呂上がりにテーブルに置いてあった事があった…

その時だ…きっと…


もし、お母さんが私に言ってくれてたら…

悩んでる皇雅に気づけていたら…

今も…隣で笑っていてくれたかな…


うちにまで来ていたとは…

それを聞いた私は…

私の責任だから、自分でケジメ着けたい…


「茉叶…みさきの連絡先、入手できない?」

「どうする気?」

「話したいから…お願い…」

茉叶はお兄さんに聞いてくれた…

私はみさきに連絡した。

茉叶と別れてすぐ…


-呼び出しコールが鳴る-


「はい…誰?」

「皇雅と付きあってた…」

「あぁ…ガキ?別れたの?」

「別れました…話ししたいんです」

「いいよ」


あっさり…


指定された場所…

私の家の近くの空き地…

意外な場所。


私は彼女を待っていると…

「おまたせ」

彼女は2人連れてやってきた。

「何から話す?」


「そんなに…別れさせたかった?よかったね?別れたよ」


生意気に言った。


笑う3人。


「ウケない?ガキのクセに生意気‼」


そう言うと…


私は蹴られた…。


2人も「諦めなよ…学生は学生らしくしな‼みさきはマジで皇雅の事想ってるんだから」


「ははっ」


笑ってしまった…


「何がおかしんだよ‼」


「おかしいよ…好きな人、困らせちゃうの?」


「はぁ?かわいくないガキ…痛い目見れば?」


私は髪を引っ張られたり、殴られたり…

制服も靴あとだらけになった…

とにかく叫んでた…

「皇雅と付き合ってるの?」

一番、聞きたい事。

「関係ないじゃん」

きっと…付き合ってない…

顔が一瞬くもったから。

「妊娠したの?」

私は聞いた…

あっさり…「してる訳ないでしょ」

やっぱり…

「寂しい人…」

ポロっとでた本音。

みさきの怒りを加速させてしまった。

「ふざけた事言うな‼私は本気なんだよ‼」

「皇雅…見る目ないね」

「はぁ?」

「あなたみたいな人につき回されたら…私は無理…」

「何それ?」

「だって…自分の事ばっかり。疲れちゃう…」

「私だって…こんな自分…嫌になる。だけど止められないんだから仕方ないじゃん‼」

私の服を掴んで揺すりながら叫ぶ。

「皇雅と一緒にいるあんた見て、許せなくなった…あんな皇雅の顔…私は見た事ない…」

切ない顔…

恋をしている顔…

「もう…いい…私、帰るね」

背中を向けた…

「私は謝らないから…」

そう言われた。

別に謝ってほしい訳じゃないからいい。


可笑しくて…なぜか可笑しくて…笑えた。



だけど…別れてからも外せなかったネックレスがなくなっていた。


大切にしてる物。


暗くなる前に探さなきゃ…


見えなくなってしまうから…


気づけば…1時間以上探した。


見つからない。


きっと…それも答えだから…。


目の前にある家…


「ただいま…」

「おかえ…どうしたの?」

「転んじゃって…」

「違う…」

「大丈夫だから…お風呂入るね…」


お湯が傷にしみる…

今さら痛い…


もう「大丈夫?」そう心配してくれた彼はいない。


そう、実感した日。


それでも…何をされても…「彼女」でいたかった。


時間が流れていく中で、一つ一つが思い出に変わる。


思い出が詰まった手帳を机の引き出しにしまった。

普段あけないところに。

外せなかったネックレスがなくなった日に…


いつか…笑って話せる日が来るまで…

見ない。



皇雅はもう私を忘れて、別の人と恋をしているのかな?


大丈夫じゃない時の口癖の「大丈夫」も…

「好きだよ」って言うと「俺も好きだよ」って他の誰かに言ってるのかな…

皇雅がつけていた香水も…タバコの銘柄も…

全部…覚えてるよ。


もう触れられない顔も髪も体も…


他の誰かの手で癒されてるのかな…


泣いたって何も変わらないし…

何も伝わらないけど…

気持ちの整理つけるから…必ずつけるから…

もう少しだけ…好きでいていいかな?


3年生になるまでには…諦めるね…。


街で見かける皇雅のトラックも、私を見てクラクションを鳴らさなくなった。



最後に…メールを送った。


咲雪です。


皇雅の事まだ大好きです。

大好きだから皇雅の幸せを願っています。

ありがとう…。



「ありがとう…」は最後に言う言葉。


ありがとう=さようなら…。


返事はいらない。


ただ…伝えたかっただけ。

私が幸せだった事。



私の体に変化が起き始めていた。

いつもとは違う…

昨日とは違う…

どうしちゃった?

私の体…。
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