塩顔男子とバツイチ女子
1.塩顔男子の小さな嘘




「…北斗。アレさ、いい加減もうそろそろどうにかした方がいいんじゃね?」


大学の構内を並んで歩く能瀬蒼(のせ あおい)が言った。


「アレって?」

「お前のストーカーだよ。つか、何でお前なの。俺なんてマジで告ってもまったく相手にされないんだぜ」


ストーカー、って程じゃないと思うけど。自宅まで付いてこられたわけじゃないし、まぁ盗撮くらいは多分されているかな。


「それは蒼の見た目の問題じゃない?」

「何が問題?!俺は見た目だってそう悪くない。むしろイケてる」


蒼の髪色、赤いけどね。左耳についてるピアスも相当イカついけどね。そもそもノリが軽いから見た目も加えてチャラ男に見られるんだろうし。


「今その話じゃねーよ。玉木の事だよ!」

「別にいいよ。気にした事ないし」


俺たちの後方、恐らくじゅうぶんな距離を保って歩いているであろう人物。
俺のプライベートを侵害するようならそれはもう、普段穏やかな俺からかけ離れた事をするかも知れないけど。そうじゃない限り、別に気にならない。


「これだけ毎日付いてこられて、ホントに気になんねーの?もう一年くらい続いてるじゃん。俺だったら絶対嫌だけど」

「うん。でも俺、玉木に興味ないから」


お前はどんだけ冷めてるんだよ、と蒼があからさまなため息をついた。
向こうがいくら俺を好きでも、俺はこれっぽっちの興味もないんだから仕方がない。
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