塩顔男子とバツイチ女子


自分では珍しくドキドキしている方なんだけど、それが表情や声色に連動しなくて淡々としているのは仕方ない。


「まぁ、反動で」

「反動?反動って何」


今度は訝しそうな顔で見てくる。うちの息子はやっぱりちょっと変わってる、とでも言いたげな。

好きでもない人と連絡を取ったりしない、というなつみさんの言葉に舞い上がってしまって。
そんな感情は長年湧き起こらなかったし、会うのも久しぶりだから嬉しいというのもある。ドキドキしすぎた反動で今は落ち着いてる。


「そこは聞かないで。帰り、遅いかも知れないけど」

「別にいいわよ。大人なんだし。自分の気持ちはちゃんと伝えないと相手に伝わらないんだからね。女の子には優しく!」


そういえばプレゼントなんて買ってない…。どうしよう。クリスマスに会うのに手ぶらってある?そこまでの関係ではないけど、でも考えれば考えるほど確信に近づく。寝付けなくなるくらいドキドキして、舞い上がっている自分がいて、本当になつみさんが好きなんだって。


「分かってるよ。大人ですから」

「さっきの撤回。北斗はまだまだ子どもね。ニヤニヤしちゃって」

「してない」


強がったものの、思い出してしまったらニヤニヤしないわけがない。俺のテリトリーの中に入れてもらえてたら、なんて。

…なつみさんが俺の事を男として好きでいてくれたらいいのにな。
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