塩顔男子とバツイチ女子
車の中で、俺が風邪を引いた事や玉木と初めてしっかり話をした事、それからなつみさんの地獄のようなシフトの話をして。
あっという間にショッピングモールに着いた。クリスマスだからなのか、日曜日だからなのか、夜なのに駐車場も結構混んでいた。
「どこに行くの?」
なつみさんは俺の隣を歩きながら、わくわくした顔で聞いてくる。
会う時はいつもおめかししているけれど、今日もオシャレで。ベージュのノーカラーのロングコートに白いオフタートル、黒いワイドパンツとショートブーツで、カジュアル系の印象が強いなつみさんだから普段と違う雰囲気が素敵だ。
「蒼と優斗が、なつみさんと行くならここだって」
屋外のイベント広場にあるイルミネーションはツリーはもちろん人気キャラクターや、宇宙をイメージした空間もあるらしい。
「私、そういうのあんまり見た事ないからドキドキする」
「なつみさん。手、繋ぎませんか」
隣にいるなつみさんに左手を出すと、少し驚いてからすぐにニッコリして右手をのせてくれた。手を握るとなつみさんも握り返してくれる。
俺より小さいその手は少し冷えていた。
「わぁ…」
イルミネーションのアーチが見えてきて、一際明るい光を放っている。アーチの先には子ども向けのキャラクターのイルミネーションスペースがあるという。
「綺麗…。光の中って幻想的なんだね」
普段の俺ならただの電球だし、なんて冷めた事を思いかねないんだけど。なつみさんと一緒にいるというだけでこんなにも感覚が違う事に気づかされる。