塩顔男子とバツイチ女子
「…ありがとう。好きだって言ってくれて。でも私…北斗くんより七つも年上だよ。それにバツイチだし…」
「歳は関係ないし離婚はなつみさんのせいじゃない。俺はどんななつみさんも好きです。バリバリ働いてるのもカッコイイし――心配だけど。しんどくても言わないから。俺が頼りないだけかも知れないけど」
「そんな事ない。北斗くんはしっかりしてる。でも私に北斗くんはもったいないよ」
なつみさんのちょっと疲れた顔は頑張って働いている証で、俺はそこも好きだし、笑顔も、心配そうな顔も、ちょっとはにかんだ顔も、どれも全部好き。
なつみさんが言いたい事は何となく分かる。年上でバツイチ、しかも年下の男と付き合うっていうだけで、じゅうぶん世間の目は厳しいのかも知れない。
「俺の親はそんなの気にしません。むしろ母親にはちゃんとその人を守るようにって言われたし。なつみさんが好きでもない人と連絡取ったり会ったりしないって言ったから俺―――」
言葉では伝え切れないような気がして、なつみさんの腕を掴んで引き寄せると、きつく抱きしめた。俺の背中をさ迷っていたなつみさんの手がしがみつくように腰にギュッと腕が回ってくる。俺の肩より少し下になつみさんの顔が埋まっていた。
「私も好きだよ。北斗くんが」
「…俺の勘違いじゃなくて良かった」
なつみさんが俺に強く抱きついてきてくれるから嬉しくて。
「どんな北斗くんも好きだよ。普段は淡々としてシュッとしてるところも、コロコロ変わる表情も、私の些細な変化に気づいてくれるところも。北斗くんが感情豊かで優しいって事、知ってるから。…北斗くんは本当にいいの?私で」
きっと今の俺の顔は最高に笑顔でデレているに違いない。蒼と優斗が見たら全力で冷やかしにかかってくるであろうくらい。
「なつみさんじゃなきゃダメです」
初めて触ったなつみさんの髪の毛はとてもふわふわしていた。