塩顔男子とバツイチ女子
「北斗、春休み何すんの?」
「特に決めてない。…あ、読みたい本がいくつかあるからそれ読む」
「は?それだけ?休みは二ヶ月ちょいあるんだぜ」
蒼はコイツ何言ってんだという呆気に取られた顔をしている。わずかな冬休みも終わって早くも一週間。休み明けから春休みまでの二週間はテスト期間。残りの一週間もとにかく勉強。単位を落とすわけにはいかない。
「後はバイト」
「なつみさん誘って遊びに行くとかないの」
「俺は休みでもなつみさんは仕事だから」
なつみさんは今月も忙しいらしい。月毎にシフトを組むものの、なつみさんは社員だから欠員が出れば穴埋めに駆り出されるし、去年みたいにインフルエンザとか病気の人が増えれば休みも減る。
「あ、でもボランティアに行ってみようかなって思ってる」
「ボランティア?」
蒼はカレーをかき込みながら首を傾げる。お正月に家に行った時、なつみさんの仕事の話からボランティア募集を知って。
「なつみさんの勤務先。近くの保育園とか学校から半年に一回くらい子ども達が来て一緒に遊んだり、中学生は実際に介助体験してるんだって」
「俺ら大学生だけど」
「うん。一般の人のボランティアは常に募集してるらしいよ。話相手になるだけでもいいんだって。お茶しながら」
もちろん出来る範囲で介助もしてほしいとなつみさんは言っていた。
「マダム達と?」
「まぁ、おじいちゃん達もいるけど」
実際に介護の現場がどんなものなのか知らないし、近い将来はそれを必要とする人がもっと増えると言われている。だから知っておくのもいいかと思った。
「蒼も行く?」
「どうすっかな~」
「玉木とデートでも?」
蒼は目を釣り上げると歯を食いしばって首を横に振る。やっぱり玉木の中では恋愛対象じゃないのか…。
「俺が行っちゃったらお前の立場ねーぞ。俺、ばーちゃんに人気出ちゃうから」
「年上キラー、と」
そういえば高校時代に蒼の家に行った時にたまたま、蒼のばーちゃんの友達が来ていて。