塩顔男子とバツイチ女子
「いらっしゃい。久しぶりね」
「明けましておめでとうございます」
「今年もよろしくね」
みすみさんのお店に来るのも久しぶりだった。冬休みに入る少し前に来て以来だから、三週間ぶりくらいかな。いつも通りコーヒーを注文してカウンター席に座る。お客さんは他に三人いて、いずれも年配の男性。新聞や本を読んでいたりタブレットを使っていたり。
「あの、なつみさんの事なんですけど」
「あー、芳恵ちゃんの事ね。それなら大丈夫よ、気にしなくて。びっくりしたでしょう?やかましいから」
お母さんの名前かな。よしえさん。覚えておこう。
「一昨日だったかしら。日曜日に四人で話したのよ。芳恵ちゃんに呼ばれて。色々言ってたけどなつみの弟が珍しくいい事を言って、それで終わり。ホクちゃん、なつみと連絡取ってないの?」
「はい。何かそういうのマメに出来なくて…。大学始まってすぐテスト期間に入っちゃってるんで、それもあって。あ、それはなつみさんに連絡したんですけど」
休みが明けてすぐに連絡して、でもその時はまだお母さんとは話していないと言っていた。それからなつみさんの怒涛のシフトの話をして。今月も夜勤が多い上に中番も何度かあるって言ってたから、日勤の時に連絡しようと思ってそのまま。
「ごめんねぇ。あの子もそういう所がダメね。仕事以外は疎かになっちゃって」
「いえ。俺がダメなんで。あの、さっき終わりって言ってましたけど、なつみさんのお母さん
は俺の事を反対してないんですか?」
「どうかしらね。そこまでは分からないけど、少なくとも口出しは減るんじゃないかしら」
なつみさんの弟の圭さんがお母さんに、誰と付き合おうが独身なんだから自由、離婚が恥ずかしいと思うのはいつの時代で、そう思うのはお母さんがどこかでなつみさんを恥ずかしいと思ってるからではないのか等、まくし立てていたとみすみさんが話してくれた。