塩顔男子とバツイチ女子



「今時、離婚なんて珍しい事じゃないんだから。ばあちゃんが若い頃は出来なかったけどね。要は、芳恵ちゃんは世間体を気にしてるんでしょう?なつみ、そんなの気にする事ないよ。気にしたってあんた、世間が食わしてくれるわけじゃないんだから」


芳恵ちゃんてのは私の母。とにかく口うるさくてやかましい。


「そうは言うけどそりゃ気にしますよ!孫はまだ?とか聞かれるだけでもウルサイのに、離婚しただなんて口が裂けても言いたくない。すぐに色々盛られてとんでもない話になったりするんだから」


都会と田舎の中間みたいな場所だからね。噂好きなオバちゃんは都会よりずっと多いかも。ましてやうちは昔から畑やってるから繋がりも多いし。


「なるべく姿現さないようにコッソリやるよ…」

「そうしてちょうだい。あんた仕事は?同じ所でやるの?」

「あ、それは大丈夫。ばあちゃんのお店の方に老人ホームあるでしょ、そこ、今の職場の系列だから。ちょうど人手不足が出てて。異動させてもらえる事になった」


これはホントにツイてる。実家から通うのはさすがに遠いから(車でも一時間以上かかる)、転職するしかないと思ってたし。
急に降って湧いた離婚に人事が情けをかけてくれた、というのが大きいけど。


「なつみはまだ若いんだから次の出逢いがちゃんとあるわよ。ばあちゃんの所で自由に伸び伸び暮らしなさい。こっちはホラ、圭や香ちゃんもいるからお互い気遣うだろうし。芳恵ちゃんにもイビられるだろうからね」

「お義母さん、なつみは実の娘なのにイビるって表現する?香ちゃんにだったら分かるけど」

「あーら、さっきあれだけズバズバ言ってたじゃない。立派なイビリだと思うけど」


私の味方はもう、ばあちゃんだけ。
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