塩顔男子とバツイチ女子

12．なつみの仕事

｢介護福祉士の市川です。よろしくお願いします｣

｢よろしくお願いします｣


春休みに入って三日目。蒼と待ち合わせて、なつみさんの勤めるさくら園にやって来た。動きやすい服装でと言われたから、ジーンズと白のニット。蒼はいつもオーバーサイズが多いけど珍しくスリムジーンズと黒のシンプルなトレーナー。

最初に30分くらいかけて簡単な介助方法や気をつける事を学んだりして、それが終わると事務所に通された。
なつみさんは制服―――ベージュのパンツと淡いピンクの半袖のポロシャツ、中に黒い長袖のＴシャツを着ていて。胸ポケットにはネームプレートと、医療用のPHS。


｢このエプロンとネームプレートを付けてください。それからPHSね。二人共、来てくれてありがとう｣

ベージュの無地のエプロンには左の胸元に、さくら園の刺繍が入っていて、俺と蒼はさっそく身につけて、ネームプレートとPHSは首から下げた。
プレートにはそれぞれ名字がプリントされた紙が入っていた。


｢なつみさん、全然雰囲気違いますね。つっても会うの二回目ですけど｣

｢職場だしね。蒼くん、おばあちゃんに人気あるって北斗くんから聞いたよ｣

｢ばーちゃん子なんで。俺、おしゃべりだし話相手としては自信があります。意外とレディーファーストなとこもあるし｣

｢頼もしいね。でも言葉使いはあまりフランクになり過ぎないように。うちの入居者さんはみんなフレンドリーだから大丈夫だけど、中には嫌がる人もいるだろうから｣


なつみさんみたく入居者さんと毎日関わっているわけじゃなく、あくまでも一日限定のボランティアで、俺達は一番年下。俺も気をつけよう。


｢私はあまり一ヶ所にはいられないけど職員はどこにでもいるから、何でも遠慮せずに聞いてね。長時間だからクタクタになっちゃうと思うけど、頑張ってください｣


お昼休みが一時間くらいあって、十七時で終わる予定になっている。俺達はなつみさんと一緒に事務所を出た。