塩顔男子とバツイチ女子
介護職はどこも大抵、常に人手不足な上に給料も安い。介護が必要な人はもちろん認知症の人の入居も増え続けている。普通に元気な人もたくさんいるけど、私が働いている所は圧倒的に何かを抱えている人が多い。
だから夜間は特に職員を多めに配置していて、夜間専門や、特に人手が不足する土日にはパートさんも多い。
それでも昼間に比べたらどうしても人数は少ないんだけど…。
離婚後の私は週二日は夜勤。残りの三日は朝八時から夜十八時まで。うちのホームはデイサービスもやっているから、付き添いで送迎バスに乗る日もある。臨機応変に対応しないと追いつかないんだ。
それにしても昨日はすごい日だった…。
急遽夜勤に駆り出されて、だから夜食用にばあちゃんにサンドイッチを作ってもらおうとお店に行って。
そしたらもう何でだか分からないけど巻き込まれた。
大学生の恋愛に。
相楽くんを好きな女の子(玉木さん)と、その子にまったく興味のない相楽くん。その相楽くんはなぜか好きな相手が私だと玉木さんに嘘をついた。私は激昴した玉木さんに、オバさんだと言い放たれた。まぁ、オバさんだけど。アラサーだし。甥っ子も生まれたし。何ならそろそろ歩きそうだし。
そして今、私はまたボロボロの見た目。
結びグセのついた髪の毛と化粧が崩れた顔。
「昨日はすみません」
…ただ立っているだけなのに爽やかだなぁ。ヨボヨボの私には太陽も加わって尚更眩しい。
「これから学校?」
「はい。飲み物買ってから行こうと思って」
家に帰る途中、駅前のコンビニに寄ったら相楽くんと出くわした。見るからにずっしりと重そうなリュックを背負っている。