塩顔男子とバツイチ女子
13.蒼
「ちょっと!三分遅刻」
「遅れるってさっき連絡したじゃん」
「そうだけど。時間は守って!」
「あのね、俺めっちゃ疲れてるから。キャンキャン言わないで労わって」
北斗の彼女の職場でボランティアが終わってから、俺は美白と待ち合わせていた。遅れたのは道路が渋滞していてバスが遅れたせい。そこからダッシュで電車に乗って、バイト終わりの美白を迎えにバイト先のショッピングモールまで。でも三分だぜ?ウルトラマンなら戦って帰る時間、カップラーメンなら出来上がる時間。遅れたのは俺が悪いけど、連絡もしたし。
「今日バイトじゃないんでしょ?」
「ボランティアしてきたから。なつみさんの職場で」
「えっ、何で誘ってくれないの」
美白はカッと目を見開いて俺に掴みかかってくる。美白って可愛いんだけど、意外とすぐ手が出るんだよな。北斗はビンタされてるし。
「俺は誘おうかって言ったよ?でも北斗が二人揃うとうるさくて迷惑になるって。それもそうだなと思ってさ。俺らすぐ騒いじゃうから、うるさいじゃん」
「うるさいのは蒼だけだよ」
「お前もそこそこうるさいけどね。で?どこでメシ食うんだっけ」
「バカッ。蒼が美味い店があるから連れてってやるって言ったんでしょ」
約束をしたのは春休みに入る前日。まぁそのずっと前からデートに誘ってたんだけど断られ続け、その日ももう寝ようかって時に美白から連絡がきた。だから正直、どこに連れて行こうと思ってたのか…。
「あっ、この近くにイタリアンあるじゃん。そこ!優斗が美味いって言ってたから」
「ホントに?」
美白のめっちゃ疑ってる目。とりあえず説教されるのは店に行ってからにしよう。疲れてるし寒いし。未だに手も握らない俺って紳士なのかヘタレなのか。どっちだろ。