塩顔男子とバツイチ女子



「なつみさん、仕事帰りですか?」

「ん?うん、そう。見た目ボロボロでしょ」


男性に名前で呼ばれるのなんて、そうそうない。少なくとも離婚してからは初めてかも。ちょっとドキッとした。


「そんな事ないですけど…一生懸命働いてる証だと思うし」

「…相楽くん、上手いこと言うね」


女心を掴むのが上手い。玉木さんには一方的に一目惚れされて追いかけられてるって言ってたけど、こういう事を真正面から言われたら女子は余計にイチコロかも知れないなぁ。
相楽くんは背が高くてスラッとしているし、顔だって整っている。立っているだけで画になるというか。ちょっと取っつきにくそうな雰囲気があるけど。


「なつみさん。これ」


相楽くんはグリーンスムージーを私に差し出していた。


「何?」

「あげます。これ美味しいから」

「でも、相楽くんの分―――」

「もう一本あるし。それと、北斗でいいです。じゃあ俺、大学行きます」


相楽くんは私の手を取ると、グリーンスムージーの紙パックを握らせた。
顔を上げた時には彼はもう歩き出していて。たくさんの学生の中にあっという間に紛れてしまった。

グリーンスムージー…女子力高いなぁ。


北斗でいい、か。また会う事、あるのかなぁ。昨日も今日も一貫して落ちついた声と喋り方だったけど、どんな顔をして笑うのか。ちょっと気になった。
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