塩顔男子とバツイチ女子
「頑張れ~」
「あ、いくら?」
「いいよ、奢る」
北斗の特別興味無さそうな頑張れと焼き立てのベビーカステラ。
“ あけおめ。今年もよろしく。明日空いてるよ。ばーちゃん家に顔出しに行くけど”
すぐに既読になる。
「北斗はなつみさんとどっか行くの?」
「なつみさん家に行く」
「えっ、いきなり家?!」
「正確にはなつみさんのおばあちゃん――みすみさんの家ね。そこに住んでるから。みすみさんは旅行に行ってるし、なつみさんも実家には行かないから。家でゆっくり食事しようってなって」
「誰もいないんならいいか。家族いたら正月から行けないよな。ハードル高すぎる」
“ バーゲン行きたいんだ。福袋は今日買うんだけど、明日初売りのとこもあるから。付き合って♡”
「荷物持ちじゃん。マジかよ。めっちゃ混んでるとこに連れて行かれて、多分待たされて、荷物持たされるだけ…」
二人はベビーカステラを食べながら覗いてくる。俺の役目は荷物持ちって事か…。でもハートマークは絶大。付き合って♡ってさ。可愛すぎるわ。
「それでも行っちゃうんだよな~。それが蒼」
「何だかんだ言うけど満更でもないっていうね」
「その通りだよ。悪かったな!」
そして俺は予想通り、めっちゃ混んでる女の戦場(デパートとショッピングモール)に連れて行かれて、待たされて、レジに並ばされて荷物持ちをさせられたんだ。