塩顔男子とバツイチ女子
ばあちゃんの家に居候を始めてからは、毎日これでもか!ってくらい、自由に過ごしている。私もいい歳だから自分の事はちゃんと自分でやるし、ばあちゃんもお店があるから炊事と掃除は分担。
日勤の日は朝早いからバタバタで、朝食を食べないで行く事が多い。朝から忙しない、なんて言われるけど。
そして今日みたいに夜勤明けは、ほぼボロボロになって帰ってくる。勤務時間が長いのもそうだけど、施設内を徘徊する人、パニックを起こしてしまう人…昼間よりも職員の手が取られる時もあるから気が抜けないんだ。
自分で寝返りが出来ない人は夜中も動かしてあげないと、床擦れになってしまうし。
ヘトヘトで帰ってきてお風呂に入って、酷い時は自分の部屋に戻る気力もなくて居間で眠ってしまう。
もう半年も夜勤をやっているのに、やっぱり若い頃に比べて体力がない。
「お姉ちゃん、ちゃんと眠れてる?」
「眠れてるよぉ。でもね、疲れが抜けなくて」
昨日の休みが潰れた分、今日休み。とは言っても夕方近くまで爆睡しちゃったし、夜勤明けの休みなんて、あって無いようなもの。
「香ちゃんこそ大変なんじゃない?祥太、もうすぐ一人で歩きそうだもんね」
「そうなの。一昨日くらいからパッと手を離して、でも一歩が出ないんだけど」
「歩き出したら早いだろうね」
コッソリ生活するはずの私はやっぱりそうはいかなくて、出戻って二日でご近所にバレた。母は半ばヤケクソ気味に自分から「娘が出戻ってきちゃって~。でも円満離婚だから!」なんて言っていたらしい。
バレた以上は堂々と生活出来るわけで、ちょこちょこ実家で夕飯を食べている。