塩顔男子とバツイチ女子
兄貴は二人いて、十歳上と五歳上。一番上の兄貴は美容師で、すぐ上の兄貴はシステムエンジニア。二人共東京暮らし。だから実家には両親と俺と母方のばーちゃんの四人。
「蒼くん、見た目とのギャップがほんとすごいよね。チャラいしオラオラしてるしうるさいのに、ちゃんと真面目なとこもある。その上、家族大事って」
「人は見た目じゃねーよ。ていうか俺は見た目もいいけどな」
「そこはスルーする」
スルーする事ねぇだろ。俺はイケてる。北斗のせいで目立たないだけ。でもまぁ美白が笑ってるからそれでいい。
「そういえば俺、ずっと気になってんだけど」
「何が?」
「最初の頃に言ったじゃん。蒼でいいって。くん付とか慣れてないし、こそばゆいわけ。美白、仲良くなったらそう呼ぶって言ってたけど、もうじゅうぶん仲良くね?」
北斗と和解してから“ 北斗くん”て呼んでて、北斗よりも先に打ち解けてるはずの俺の事は未だに“ 蒼くん”。何か納得いかねーんだよな。つまらないヤキモチなんだけど。
「いきなり呼び方変えるのってドキドキするよ。蒼くんみたいにフレンドリーじゃないし」
「まぁね。俺は割とすぐ名前で呼んじゃうけど」
北斗の事も勝手に呼び捨てしたし、美白が謝ってくれてすぐに俺が友達になろうと言って、そこから呼び捨て。名字だと距離があるし、名前の方が打ち解けられる気がするんだよな。
「新年だし、いい機会じゃん。サンハイッ!」
「アハハ。サンハイッって」
美白はツボに入ったらしくお腹が痛いと言いながらしばらく笑っていた。