塩顔男子とバツイチ女子
「でもそうだね。新しい事始めるにはちょうどいいのかもね。蒼、今日はありがとう」
“ くん”が無いだけでこんなに違うなんて…。今まで意識した事なかったけど、これはやばい。俺、かなりマジで美白に惚れてるんだな。
「これから蒼だかんな」
「分かってる」
「はー、やっとすっきりしたわ。お茶でもして帰る?」
「いいね。ちょっとお腹も空いたし」
「俺、お前のおかげでそこら辺の女子よりよっぽどスイーツに詳しいからね」
美白はとにかく甘い物に目がなくて、カフェでもファミレスでもちょっといいレストランでも、とにかくデザートが大切だと言う。おかげでデートに誘う俺は毎回リサーチに必死。グルメ雑誌、タウン誌、ネットに友達からの情報…ある意味、勉強より必死。
「この前のチョコレートケーキ美味しかった」
「あそこ寄る?」
「寄る!でも混んでるかなぁ。あ、お正月も営業してる?」
クリスマスに一緒にケーキを食べたカフェ。ここは優斗からの情報。あいつは彼女はいないけど、自分が甘い物好きだから一人でも食べに行っちゃう。
「してますとも。ちょうど今日から」
「調べててくれたんだ。ありがと」
「どういたしまして。ってかさー、コレいい加減重いんだけど」
「蒼が持ってくれるって言ったんだよ?」
「それはそうだけど、靴が重いんだよ。お前が二足も買うからかさばるし。俺は自分のも持ってるんだぜ」
「持ってやるから買えって言ったの蒼じゃん」
これが北斗の言う、ギャンギャンうるさいってやつ。お互い気と我が強いからすぐヒートアップしちゃう。俺達はこの後ケーキを食べて、途中まで一緒に帰った。
美白になら尻に敷かれるのも悪くないかなって思っちゃったりして、優斗の指摘はやっぱり当たってた。今年の俺はどうなるんだろう。二年連続大吉だったけど去年は美白にボロクソにフラれて、でも友達になって。今年は付き合えるのか…。神のみぞ知る?いや、美白のみぞ知るってとこかな。