塩顔男子とバツイチ女子
「…お正月になつみさん言ってたよ。北斗くんを育てたお母さんなんだから、素敵な人なんだろうなって思う、って」
「そういうのはもっと早く言って。なっちゃん最高!」
母は本気のガッツポーズをしている。なっちゃんて。勝手にあだ名つけてる。俺だってまだなつみさん呼びなのに。
「会ってみたいわねぇ。話が弾みそう」
「この前言ってたよ。会ってみたいって」
「ホントに?そのうち連れて来たらいいじゃない。あ~、でもいきなり親に会っちゃったら重いかな?あんたまだ学生だしね」
すでになつみさんのお母さんと会ってしまったなんて絶対言えない…。お父さんと圭さんの奥さん、祥太くんはまだ会ってないけど…。みすみさんとはお店に行けばよく話すし、圭さんとは連絡先も交換してる。
なつみさんは俺と違って気さくだから、多分母とも何の問題もなく話せるんだろうな。バーベキューの時もそうだったから。
「俺からは詳しくは言えないけど、なつみさんは色々大変な思いをして今に至ってる。実際に仕事を体験したけど、めちゃくちゃ忙しいのにちゃんと信念持って頑張ってる人」
「それなら尚更、北斗がちゃんと支えてあげなさい。後ろ盾があるかないかでは全然違うからね。女性には優しく。大切にして、しっかり守ってあげるのよ。あ~、でも肩の荷が下りるわ。北斗を拾ってくれる女性がいて安心。私も穏やかな老後が過ごせるわね」
拾ってくれるって…俺ってそんなにダメな男だった?いや、高校時代を振り返ればダメだったかも知れない。ていうか根本的にそうなのかも知れないな。玉木の事もちゃんと知ろうとせずに攻撃したし。
ふと、みすみさんの言葉を思い出した。
“ なつみはホクちゃんによって解放されるし、ホクちゃんもなつみといる事で新しい事を吸収していくんじゃないかしら。お互いに無いものを持ってるって大事な事よ”
そんな関係になれたらいいなぁ。そういえばなつみさん、今頃お母さんと喧嘩になっていないといいんだけど…。