塩顔男子とバツイチ女子
「ちょっと会わないうちにまた大きくなったね」
「お姉ちゃん、全然来ないから。正月明けに来た時だって私とお義父さんは買い物に行ってたから参加出来なかったし」
祥太は私がクリスマスプレゼントにあげた遊具で遊んでくれている。子どもってちょっと見ないうちに大きくなるのは何でだろう。
「あの場にいなくて良かったと思うよ。思わぬところでヒートアップしちゃって」
圭の会心の一撃が出たあの日。あれからちょうど一ヶ月くらい経ったかな。歩いて五分の近距離なのにまったく来なかった。母から連絡は無かったし、出戻ってからは私からする事はまず無い。
「彼氏は元気?圭がイケメンて言ってた」
「今、インフルにかかってるのよ。もう熱は下がってて完治待ちだって。絶対うちの職場でもらってきたんだろうな。ボランティアに来てもらったのに申し訳ない」
北斗くんはボランティアの二日後にインフルになったらしく、解熱してから連絡をもらって本当に申し訳なく思った。やっぱりこの時期は危険だったな。蒼くんは無事だったみたいだけど。
「なつみ、お茶」
母が温かい緑茶の入ったマグカップを置いてくれる。香ちゃんにはホットレモン。こたつの上にはミカンとお茶菓子があって、お煎餅にモナカ、かりんとうとか、ばあちゃんちとデジャヴ。
「ありがとう」
「どうなの、あの子とは」
「ごく普通に。大学生だし、何がどうこうっていうのは無いから。私もバツイチだし」
「そんなのは当たり前の事でしょ。何かあったらそれこそ困るわ」
母は大袈裟にため息をつく。そんな事は考えもしなかったな。付き合い始めて間もないってのもあるけど、結婚よりも離婚の方が大変だと思い知った今、再婚願望もゼロ。世間一般はどうか分からないけれど、私と北斗くんは割とドライな付き合いのような気がする。