塩顔男子とバツイチ女子
15.塩顔男子とバツイチ女子
「良かったわねぇ。希望の授業が取れて」
「一年生から継続して取ってきたやつは優先的なんで。でも、やっつけで取ったやつもあるんですけど」
「あとは卒業目指して頑張るのみね」
四月になり、俺は大学四年生になった。今年も取りたい授業、取れなかった場合の希望をいくつか組んで、そのうち一年生から継続してきた授業は優先的に決まった。もちろん、なかなか希望通りにはいかなくて。蒼はことごとく希望が通らなかったようで、時間割を組むためにかなり頭を抱えていた。玉木は割とすんなり決まったらしい。
みすみさんのお店にはこうして相変わらず、時々通ってる。今は俺しかいない。
「今年は忙しくなるのかなぁって。就活も始まるし」
「相変わらず大変なのかしらね?就活って。うちはホラ、なつみは資格を取ってすんなり就職したし、圭は農業継いだから縁がなくて」
「先輩達の話を聞く限りは大変みたいです。でも蒼は今バイトしてる所にそのまま決まりそうだし、優斗もまぁ学校を通していくつか案内があるみたいで。決まるかどうかは分かりませんけど」
やりたい事が決まってないのは俺だけ。やるとしたら統計学を生かして、マーケティングとかそっち系かな。
「今の若い子達は大変よね。こんな時代だから、学びたくても学べない、働きたくても働けない、結婚や子育てもそうね。窮屈な時代だわ」
「俺らより、みすみさんの若い頃の方が大変な時代だったんじゃないですか」
「まぁ嫁いで来てから色んな事があったわねぇ。気がついたらすっかり老後だけど」
みすみさんはウフフと笑った。結婚して子育てと畑仕事を両立して、それからこのお店をオープン。孫であるなつみさんと圭さんが生まれて、今は曾孫の祥太くんがいる。
「いつかは全部笑い話なのよ」