塩顔男子とバツイチ女子
蒼とは校門の前で別れた。蒼はファストファッションのお店でバイトしていて、だから髪色や服装が多少派手でも構わないし流行にも詳しい。蒼は元から服が好きで、俺も蒼の影響で多少気を使うようになった。
大学から一駅分くらい先に、ここ一年くらいお気に入りの喫茶店がある。昔ながらの純喫茶って感じかな。気品のある、でも話上手なマダムが営んでいる。客層は常連のおっちゃんが圧倒的に多いけど。静かで穏やかな雰囲気が好きなんだ。
お店のドアを開けると、挽きたてのコーヒーの匂いがした。
「いらっしゃい」
オーナーのみすみさん。綺麗なシルバーヘアと紅いリップがチャームポイント。
「こんにちは」
いつもは大体奥のテーブル席に座るんだけど、今日はカウンター席にした。みすみさんは注文が入ってから豆を挽くから時々それを間近で見たくなる。挽き立てのいい香りもするし。
「何飲む?」
「ブラックで。あったかいやつ」
「今日はもう終わったの?学校」
「はい。明日は一限からビッシリだから、今日はゆっくりしようと思って。バイトもないし」
俺はここでのんびり本を読むのが好き。たまに宿題をやったりもするけどね。賑やかな会話が飛び交っている時もあれば、今日みたいにほとんどお客さんがいなくて静かな日もある。人間観察もしたりして楽しい。