塩顔男子とバツイチ女子
最後の授業を終えて大学を出ると、外は真っ暗で冷たい空気が満ちていた。今日はよく晴れていたから、星がたくさん見えている。
朝から頭フル回転だったからさすがに疲れた。
帰ったらゆっくりお風呂に入ろう。寒いから、お湯はちょっと熱めに沸かして。
「相楽くん」
ちょっと鼻にかかった、聞き覚えのある声に呼び止められた。振り向くとやっぱり玉木。
「どうしたの」
「一週間ぶりだよ」
「そうだったっけ」
玉木は相変わらず見た目に気を使っている。白いノーカラーコート、黒いタートルネックにボルドーのスカート。それからヒールの高い黒のショートブーツ。元々背が高い方なのにヒールなんて履くから目線が俺とさほど変わらない。
「いつも付きまとってた女が一週間も姿現さなかったんだよ?ちょっとくらい気になったりしない?」
玉木は怒っているのか(確実に怒っているんだろうけど)、少し早口。
「全然。だって俺、本当に興味湧かないんだよね、玉木に。玉木は虚しくならないの?何をやっても効果のない男を好きでいて」
蒼の言うように大抵はアタックされ続ければ興味を持ったり下心を抱いたり、もしかしたらそれがキッカケで好きになったりするのかも知れない。でも俺は玉木に対してそれがまったく無い。