塩顔男子とバツイチ女子
「北斗くん、で。いい?」
「はい」
声色は何の変化もないけど、優しい表情になっている。
…北斗くん、今嬉しいんだ。
「なつみさん。おやすみなさい」
北斗くんのトーンは不思議。淡々と話すけど、決して冷たい響きじゃなくて。スッと耳に入ってくる、馴染みの良い声。柔らかい、丸みのある滑らかな感じ。
北斗くんがスタスタ歩いて行ってしまうから、私は慌てて呼び止める。
「北斗くん!待って!」
立ち止まって振り向いた北斗くんは不思議そうに、少し首を傾げている。
「連絡先!交換しよう」
「あ、忘れてた…」
戻ってきてくれた北斗くんと、トークアプリのIDを交換した。
「なつみさん、飲みに行く時は誘ってね」
「うん。連絡します」
「それじゃあ、今度こそおやすみなさい」
「おやすみなさい」
北斗くんはちょっとだけ微笑んで、気をつけて帰ってくださいねと言った。
どうしてだろう。私は今、ドキドキしている。弟よりも更に年下の男の子に、とってもドキドキしている。