塩顔男子とバツイチ女子



「北斗くん、で。いい?」

「はい」


声色は何の変化もないけど、優しい表情になっている。
…北斗くん、今嬉しいんだ。


「なつみさん。おやすみなさい」


北斗くんのトーンは不思議。淡々と話すけど、決して冷たい響きじゃなくて。スッと耳に入ってくる、馴染みの良い声。柔らかい、丸みのある滑らかな感じ。

北斗くんがスタスタ歩いて行ってしまうから、私は慌てて呼び止める。


「北斗くん!待って!」


立ち止まって振り向いた北斗くんは不思議そうに、少し首を傾げている。


「連絡先!交換しよう」

「あ、忘れてた…」


戻ってきてくれた北斗くんと、トークアプリのIDを交換した。


「なつみさん、飲みに行く時は誘ってね」

「うん。連絡します」

「それじゃあ、今度こそおやすみなさい」

「おやすみなさい」


北斗くんはちょっとだけ微笑んで、気をつけて帰ってくださいねと言った。


どうしてだろう。私は今、ドキドキしている。弟よりも更に年下の男の子に、とってもドキドキしている。
< 29 / 191 >

この作品をシェア

pagetop