塩顔男子とバツイチ女子
「ところでホクちゃん、あの子どうするの」
みすみさんは俺の事をホクちゃんて呼ぶ。今までの人生でそんな呼び方された事ないから、その度にちょっと気恥ずかしくて。
みすみさんの年齢こそ分からないけど、みすみさんは曾孫もいるって言ってた。俺の事も孫みたいなもんなのかな。
「あの子?」
みすみさんが顎で窓を指すから振り返ると、ちょうど玉木が入ってきた。
「いらっしゃい。ご注文は?」
「カプチーノはありますか?」
「カプチーノね。お好きな席にどうぞ」
俺から二席離れて玉木が座る。玉木は多分、普通の男から見たら至極可愛い女性なんだと思う。体型はスラッとしていて手足も長いし、オシャレにもきちんと気を使っている。髪の毛は綺麗に巻かれていたり、難解そうなアレンジをしていたり(編み込んだり、ねじったり)。
「相楽くん」
「はい」
構内で後をつけられるのはまだしも、これはもう完全にプライバシーの侵害だな。
「どうして私じゃダメなの?」
「前から言ってるけど。俺、玉木にまったく興味ないんだよね。好き嫌いじゃなくて、興味が湧かない。何で俺なのって思うよ。玉木なら引く手あまただと思うけど。蒼なんて玉木にボロクソにフラれてるのに、今だって玉木が声かければすぐにオチると思うよ」
玉木には一年くらい前から度々告白されている。そしてその都度断っている。その繰り返し。
「私は相楽くんが好きだから他の男なんてどうだっていいの」
「ふーん。蒼からよく情報が来てるけどね、玉木が最近色んな合コンに行ってるって」