塩顔男子とバツイチ女子



「それを珍しがったりしないで。まぁ俺は散々からかったけどね。感情の波もそんなに感じないじゃん、普段。でもそれが北斗だから。全部見せた方が楽なのにね。スカしてるから面倒で。美白がいくらコイツを好きでも、テリトリーに入るって難しいと思うよ。自分の世界があるから」

「あ…喫茶店。テリトリーに入ってほしくないって言われた」

「確かに言った。それからスカしてない」


一人で落ちつける場所がほしいから。蒼を連れて行った事は何度もあるし、誰も彼も嫌だというわけじゃない。でも俺は昔から基本的に単独行動が多くて、蒼はそれを分かっているから適度な距離感を保ってくれている。


「北斗がここにいるじゃん」


目の前にいるんだから指さすな。


「で、美白がキャーッ♡て追いかけて行くとする。コイツは特に動かないでしょ。来られても興味が無いから気にしないし。だからこっちが踏み込みすぎちゃって、気づいて引き返した時にはもうコイツはいない。俺なんか最初踏み込みすぎて通り越しちゃって。北斗が振り向きもせずにフツーに歩いて行くから追いかけて捕まえた感じ」

「あ~…そんな感じだったね」


蒼はグイグイ来るから俺がサッとかわして、でもめげずに追いかけてきて、気づいたら仲良くなって。


「つまり相楽くんと二人きりはやっぱ無理って事だ」

「そういうこと。それで本題だけど」

「え、何。今までのは茶番?」


蒼がニヤニヤしてる時なんてろくな事がない。嫌な予感しかない…。
< 32 / 191 >

この作品をシェア

pagetop