塩顔男子とバツイチ女子
「それを珍しがったりしないで。まぁ俺は散々からかったけどね。感情の波もそんなに感じないじゃん、普段。でもそれが北斗だから。全部見せた方が楽なのにね。スカしてるから面倒で。美白がいくらコイツを好きでも、テリトリーに入るって難しいと思うよ。自分の世界があるから」
「あ…喫茶店。テリトリーに入ってほしくないって言われた」
「確かに言った。それからスカしてない」
一人で落ちつける場所がほしいから。蒼を連れて行った事は何度もあるし、誰も彼も嫌だというわけじゃない。でも俺は昔から基本的に単独行動が多くて、蒼はそれを分かっているから適度な距離感を保ってくれている。
「北斗がここにいるじゃん」
目の前にいるんだから指さすな。
「で、美白がキャーッ♡て追いかけて行くとする。コイツは特に動かないでしょ。来られても興味が無いから気にしないし。だからこっちが踏み込みすぎちゃって、気づいて引き返した時にはもうコイツはいない。俺なんか最初踏み込みすぎて通り越しちゃって。北斗が振り向きもせずにフツーに歩いて行くから追いかけて捕まえた感じ」
「あ~…そんな感じだったね」
蒼はグイグイ来るから俺がサッとかわして、でもめげずに追いかけてきて、気づいたら仲良くなって。
「つまり相楽くんと二人きりはやっぱ無理って事だ」
「そういうこと。それで本題だけど」
「え、何。今までのは茶番?」
蒼がニヤニヤしてる時なんてろくな事がない。嫌な予感しかない…。