塩顔男子とバツイチ女子
「なっちゃん、再婚しないの?」
「まだ若いもんねぇ。次があるからいいわね」
「仕事どうなの?さくら園のデイサービス通ってる人多いけど」
「うちのおばあちゃんも通ってるのよ」
「ね、彼氏いないの?」
四方八方から声が飛んでくる。パートのおばちゃん達は昔から働いてる人達ばかりで、当然私や圭が子どもの頃から知っているから余計に。
「恋愛はしてもいいかなって思うけど。仕事ばっかりで。毎日仕事で終わり」
「ダメよ~。それじゃあ、あっという間に歳食ってあたし達みたいになっちゃうんだから」
「そうそう。気づいたらおばちゃんよ!」
アッハッハと笑い声が上がってる。洗浄した、ちぢみほうれん草の袋詰めをしながら。
「姉ちゃん、どうすんの。そんなんじゃマジ仕事して人生終わっちゃうよ」
「うるさい」
圭はキャベツが山盛り入ったケースを運び込んでいる。黒いスエットのパンツとグレーのトレーナー。それからキャップ。
「祥太どうなの?」
「大した事ないよ。鼻風邪だって」
「それならいいけど。色んなの流行ってるから」
RSウィルス、おたふく、ノロにロタ…嫌な季節だ。
「香ちゃんの手伝いしてあげなよ。一日ずっと祥太の世話してたら大変だろうし」
「分かってるって。姉ちゃん、口うるさいとモテないよ」
「今更モテなくていいわよ」
「あら、モテてナンボよ。なっちゃん、まだ若いんだから。再婚するだろうし」
モテなくたっていい。私を大事にしてくれる人がいればそれで。離婚してからしみじみ感じる。