塩顔男子とバツイチ女子
“はい。母親がつけたそうです。昔の人は夜道に迷っても夜空の北斗星を頼りに歩いたから、道標になれるような、頼りになる明るい人になって欲しいって。”
そんなに立派な人間になれるかは分からないけど。そもそも俺は明るい性格じゃないし。でもこの名前は気に入ってる。人とあまり被らない名前だし。響きも割と好き。
“素敵な由来だね。それにロマンチック。今ちょっとサボって、ボーッとしてたの。そしたらこうして北斗くんから連絡来て。たまたま空見てて、北斗くんの名前ってもしかしてそうかなぁって”
何気ない時に思い出してもらえるのは嬉しい。ちゃんとその人の心の中にいるって事だから。
“なつみさんは?夏生まれ、とか?”
安易すぎるかな…。
“不正解!春生まれでした。私の祖父が付けてくれたんだけど、菜の花が由来なんだ。菜の花の花言葉はいくつかあるんだけど、その中から「小さな幸せ」「元気いっぱい」「豊かさ、財産」を選んだんだって”
菜の花が由来だったんだ。菜の花にそんなにたくさんの花言葉があるなんて知らなかった。
すぐに通知音が鳴って画面に目を戻した。
“色々な経験をして豊かな人生を遅れるように、平凡でも日々の生活を大切に出来るように、健やかに育つようにって考えてくれたみたい”
この前のなつみさんの疲れた顔を思い出す。それでもその中に明るさがあると言うか。少なくとも俺と話してくれている時のなつみさんは表情がよく変わる。