塩顔男子とバツイチ女子
俺の名前を呼んでくれた時のちょっと照れているような顔。駅まで送らなくていいのか、と言った時の少し心配そうな顔。それから、連絡するって言ってくれた時のはにかんだ顔。
考えてみればそれは俺に小さな幸せを与えてくれているような気がする。実際今もそう。こうしてやり取りしていて、ほっこりしている自分がいる。
“俺、なつみさんの名前合ってると思う”
“ありがとう”
バンザイしているキャラクターのスタンプが表示される。
“なつみさん。会えませんか?”
“え、いつ?”
俺ってとことん変わってる。グイグイ来られるのは嫌いなのに、自分が興味のある人には考えるよりもこうして先に言葉が出てしまう。
“いつでも。俺待ってたけど、なつみさんから全然連絡なかったから”
普段そこまでスマホに執着はないけど、連絡先を交換してからというもの、着信がないかとこまめにチェックしてしまう自分がいて。バイト中もそわそわしたり。
既読になったものの、なかなか返事がこないから駅に着いてしまった。なつみさん、戸惑ってるかな…。
改札を抜けた時、ようやく通知音が鳴った。
“連絡出来なくて、本当にごめんね。北斗くんのスケジュール送って。そしたら時間作るから。タイミングが合えば今週中にでも”
自分の顔がニヤけているのが分かる。表情を戻そうとしてもつい口角が上がってしまう。
電車を待ちながらなつみさんに返事を送った。