塩顔男子とバツイチ女子
「…数合わせだから」
「それはどうでもいいんだけど。何で俺なの。流行りの塩顔男子ってヤツだから?とりあえず捕まえておこうって感じ?」
俺の顔は薄い。昔からサッパリ顔。特別なインパクトもない。ごく普通のありきたりな顔なんだけどね。蒼に塩顔が流行ってるから女子に騒がれるんじゃないかと言われた事がある。
「そんなんじゃない。相楽くん、普段クールっていうか…何事にも冷静な感じだけど、能瀬くんといる時は楽しそうに笑ったりはしゃいでる時もあって。もっとそういう顔見たいなって、それで好きになったんだよ」
結構ちゃんと俺の事を見てるんだ…。大学に入ってから顔目当てで女子に追いかけられたり、知らない間に取り巻きが出来てたりして(蒼が追っ払ってくれてたみたいだけど)。
「…そこはありがとう。でもごめん。俺は玉木とは付き合えないし、帰って。俺のテリトリーに入ってきてほしくない。それにここでする話じゃないよ。他のお客さんに迷惑」
玉木の目が少し潤んでいた。
コーヒーの匂いが立ち込める店内、何の曲かは分からないけどジャズも流れていて。
「…もしかして、いるの?好きな人とか…」
「さぁね」
俺に好きな人がいなければ、玉木はこのまま俺を諦めないんだろうか。仮にいたとしても変わらずにどこまでも追いかけ回されそうだけど。