塩顔男子とバツイチ女子
普段は車で通っているからよく見る事がないけれど、駅前は意外とライトアップされていて綺麗だった。この先を更に進んで坂を上った小高い場所に私の職場がある。
腕時計の針は十七時になろうとしていた。北斗くんは授業が終わってから来ると言っていたから、そろそろかな。
夜勤明けだから顔が浮腫んでいる気がして仕方がない…。クマも隠し切れていないし。ため息をつきながら鏡で顔をチェックしていると不思議そうな顔をした北斗くんの顔が映り込んできた。
「わっ」
「お待たせしました。ちょっと捕まっちゃって」
北斗くんは乱れた前髪を直しながら事も無げに言う。この淡々とした喋り方、何か好きだ。
「なつみさん、おめかししてる。綺麗」
「あ、ありがとう…」
綺麗だなんて言われ慣れていないから、動揺してしまった。
ていうか北斗くん、捕まったって言ったよね?
「それより捕まったって、どうしたの」
「玉木に。なつみさん、覚えてる?」
「もちろん」
私をオバさんだと言った、見た目が可愛くてスタイルも良い女の子。
「玉木とたまたま鉢合わせて、バーベキュー行こうって絡まれて断って。そしたら玉木が追いかけてきてどこ行くんだってうるさいから、メシ食いにって言ったんですよ。自分も行きたいって言うから、デートだからいい加減にしろって俺キレちゃって。普段そんな事しないのに」