塩顔男子とバツイチ女子




「うまっ。ヤバい」

「美味しいよね。ここの天ぷら食べたら他のお店に行けないもん」


北斗くんを連れてきたのは駅前を抜けた飲み屋街の更に裏の方にある、隠れ家的な天ぷらが美味しい居酒屋。亡くなった祖父のお気に入りで行きつけだった。


「海老が甘い」

「プリプリしてるよね。ジューシーだし」


週末だけどそこまで混んでいなくて、常連のおっちゃん達が多い。カウンターに並んで座って、その都度揚げてもらうから熱々で美味しい。

天ぷらの他にもお刺し身の盛り合わせ、モツ煮、枝豆とチーズの春巻き、カニの甲羅に入ったカニグラタン…色んなものをつまんでいる。


「ねぇ、さっきのバーベキューの件だけど」


ここに来るまでに話してくれた。北斗くんの友達の蒼くんの話、その蒼くんが玉木さんと仲良くなってしまった事や、二人がバーベキューを企てて諦めておらず今日玉木さんに誘われた事。


「もしもどうしても行こうって流れになったら、私行ってもいいよ」

「えっ」


北斗くんが目を見開いた。涼し気な一重の目が、真ん丸になるくらい。


「ダメです。玉木となつみさんが一緒になったら大惨事になるから。なつみさんに迷惑かかるし危険すぎる」

「もしもの話だよ。はい」


揚げたてのイカと椎茸と獅子唐。お塩をパラパラふって食べると美味しい。

「北斗くん、何飲む?」

「レモンサワーで」

「レモンサワーと梅酒サワーください」
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