塩顔男子とバツイチ女子



実家には弟家族がいて戻れなかったから、私はばあちゃんの家に居候させてもらっている事も話した。


「今はもう笑い話だけどね。あの瞬間は本当に打ちのめされたし、私の人生どこで間違ったかなって心底思った。今の私は仕事ばっかりしてる。…今はっていうか、結婚してた時もそうだったんだと思う。シフトは今より全然楽だったけど、夜勤もあまりやらなかったし。けどそういう問題じゃないよね。一緒にいる時間が長かったから――言い訳だけど、どっかで甘えてたんだと思うし、相手の些細な変化にも気づかなかった」


ちゃんと見ていたとして、気づけたのかと聞かれたらそれも分からないけど。

北斗くんは私の話を黙って聞いてくれていた。口も挟まず、ただ真剣な表情で。


「…なつみさん、今は傷ついてない?」

「もう大丈夫。でも…肩身は狭いかなぁ。離婚は自分のせいじゃないと思う反面、片っぽのせいだけではないと思うし。出戻って来ちゃったしね。弟はちゃんと家族を持って頑張ってるのに、私はダメだった」


ばあちゃんの言う通り、今は離婚なんて珍しい事じゃない。毎日そこかしこで起きているだろうし。


「肩身が狭いなんて思う必要ないと思う。それは男が悪いし。どんな理由があっても。仕事が忙しいのはみんなそうでしょ?元旦那さんがどんな人か分からないけど、男なら惚れた女はちゃんと守らないと。裏切ったり傷つけたりするなんて最低だよ」


冷静な喋り方だけど声が怒ってる。
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